『天然コケッコー』


観てきました。この原作の大ファンであり、「くらもちふさこ」作品が大好きな母娘3人で。


この作品に限らず、原作ファンにとって映画化やドラマ化されるのって大抵の場合、嬉しいけど不安。そして観た後ほとんどの場合は「これは別物」と自分で自分を納得させることになる。時には台無し感でガックリくることも。でもこの『天コケ』は違った。原作のイメージのままの素敵な映画になっていた。美しい自然がいっぱいの田舎で、傍から見ればドラマティックな大事件が起こるわけでもなく、ただゆっくりと過ぎていく日常。そんなくらもちさんのコミックの世界が、とても上手く映像化されていた。それもそのはず、脚本の渡辺あやさんは、くらもちさんの大ファンで、ほとんど原作のセリフを残したまま構成したそうだ。


『田舎の小さな村。小中学生合わせても全校生徒がたった6人の分校に、東京から転校生がやってくる。これだけでも村では大事件なのに、その生徒はいかにも都会を感じさせるカッコイイ少年“大沢広海(岡田将生)”。初めて同級生ができて喜ぶ、明るくて面倒見が良い美少女“そよ(夏帆)”は・・・』


キャストがみんな良かったなぁ。まさにイメージどおり。若干“伊吹”ちゃんが可愛すぎだったけど(笑)、でも演技でいい味出していた。パンフによると、大沢くん役の岡田くんは、「芝居的にはオーディションで監督が頭をかかえたほどの未熟さ」だったそう。「でもなぜかみんなが目を奪われ、つい笑ってしまうような不思議な魅力を持っていた」と。そっけなくてちょっと失礼で、でも優しいところもある、そんな都会っ子の大沢くんに、岡田くんはよく合ってたと思う。もちろん長身で立ってるだけで絵になるところも。
主人公のそよを演じた夏帆ちゃん。透明感があって可愛くて、自然がいっぱいの風景によく溶け込んでいた。私のイメージの“そよ”よりは、少しおとなしめな感じだったけど、それはそれでとてもよかった。


そして何といっても自然の美しさ。透きとおった海。うっそうとした緑。どこまでも続く田んぼや畑。吹いてくる心地よい風。古いけど清潔そうな校舎。交わされる方言。そして猫。
ただ子供達がてくてく歩いているだけでとてもほのぼのした気持ちになる。どこか懐かしくて切なくて、嬉しくなる。胸がキュンとする・・・そんな映画。


映画は高校入学の頃まで描かれていたけれど、どうしても時間的に端折らなくてはならないため、原作を読んでない人には分かりづらいところもあったかもしれない。でも観ている間、くすくす笑いや大きな笑いも聞こえてきたので、大丈夫だったみたい。取り立ててストーリーに大きな山場はないので、もしかしたら退屈に思う人もいるかもしれない。でもこれが『天然コケッコー』なのだ。だから観終わった後はとても満ち足りた気分だった。そしてほんわか幸せな気持ちになった。
エンドロールで流れる「くるり」の歌もぴったり。
そうそう、エンドロールの後に1ショットあるので、あわてて席を立たないでね。といっても衝撃の結末でも何でもないんだけどね。