年賀状で思い出すなぁ


今住んでるこの家を建てるときのこと。休みごとにいろんなハウジングセンターへ見学に行った。
住宅メーカーの場合、注文住宅と言っても、自由度の高い個人の建築家が立てる家とは違って、窓ひとつとっても、大きさや場所など、たくさんの決まりごとがあるので、なかなか思い通りにはいかないことも多い。信頼できる建築家や工務店があれば、そこでお願いするのが思い通りの家になりやすいし、料金的にも一番なんだろうけど、知らない場合は、名の知れた住宅メーカーにお願いするのが、少々高くても安心料ということで失敗は少ないと思われる。メンテナンスもしっかりしてるしね。そんな訳で、我が家はある住宅メーカーに決定した。
そして担当になった営業の佐藤さん。
長いのでたたみます。
佐藤君と呼んだ方がピッタリの、20代前半と思われる若い男性。家を建てるまでには、思ったより何度も細かい打ち合わせがあって、結構大変なんだけど、その度素人の私たちが出す無理な希望を、たとえ叶わなくても一生懸命話を聞いてくれ、努力してくれたとても好青年。要領のいいタイプではないけど、素朴な感じで、真面目で、お客さんのために真摯な態度で接するところが、とても好感がもて、主人も私も安心して何でも相談できた。
そんな彼が、着工を目前に控えたある日、「実は退職することになりました」と、次の担当者と一緒に来た打ち合わせの席で言った。「○○様は僕にとって最後のお客さまなので、出来上がりが見られないのは大変心残りなんですが…」と。着工すれば、営業の方の仕事も一区切りではあるんだけど、辞めちゃうのには正直びっくり!後で後任者から聞いた話によれば、なんでも真面目な彼は、お客さんと会社の板ばさみで悩む事が多く、営業の仕事は自分に合っていないと判断。前から子供が大好きなので、教師になりたいという話のようだった。子供好きなのは、うちの子たちに対する接し方でも感じていたから、「なるほど〜」と納得だった。
そして引き継がれた担当者は、まぁ良いんじゃない?な感じ。でも営業ではなかったけど、別件の打ち合わせの担当者は、要領が良いだけの、全然好きになれない人物だった。
家も無事建って迎えた初めてのお正月に、思いがけず佐藤さんから年賀状が届いた。そこには佐藤さんらしい大きくてヘタクソな字で、「教師の資格を取るため学校に入って勉強しています」と書いてあった。それから2年後くらいに届いた年賀状には、「無事小学校の先生になることができ、5年生の担任をしています」と。それを読んだ時、なんだかとっても嬉しくなった。その後も、「きっともう、今年は来ないよねぇ」と年賀状を出さずにいると、元旦ではなく3日くらいに届いたりするのが彼らしい(苦笑)。
そして10年経った今でも、佐藤さんから年賀状が届く。最近、信じられない事件を起こす先生が多い中、「佐藤先生はきっと生徒のために一生懸命な良い先生なんだろうなぁ」って、ヘタクソな字を見る度思うんだよねぇ。一般企業にいた事も、教師という仕事には、きっと大いに役立ってると思う。今度のお正月も、あの字にお目にかかれるのかしら?ほんの短いお付き合いなのに律儀だよなぁ。でも、来なきゃ来ないで、寂しいよねぇ、きっと。