『おくりびと』


よかった。
本当に本当に良い映画だった。
夫と観に行ったんですけど、2人とも感動しました。ここまで感動したのは何年ぶりだろう。それくらいよかったです。


この映画は納棺師という、亡くなった人を清め、死に化粧をほどこし、棺に納めるまでの儀式を行うという、普段あまり目にすることがない職業が描かれているんですが、こういう事は以前は家族が行っていたそうです。確かに実家で一緒に暮らしていた祖母が亡くなったとき、母や叔母と一緒に、私(当時22、3歳だった)も祖母の身体を拭きあげたり、脱脂綿を詰めたりしました。そういう意味でも、昔は死というものが今よりずっと身近だったなぁ。


人間の死を扱った映画というととても重い気がするけれど、笑える場面もふんだんに盛り込まれているところも良いんですよね。笑いと涙が交互にやってきます。といっても私の涙の場合、何度も号泣しそうになって、こらえるのが大変でしたけど。これって年々涙もろくなっているせいもあるんだろうけど、でもそれって悪いことじゃないなぁって最近思います。年を重ねるからこそ色んな経験をしてきたわけで、だから色んな立場がわかるようになってきて。例えば子どもの時ならば子どもの気持ちしか理解できなかったことが、今では親の気持ちも理解できる。その分感じることも多くなる。思いやりも深くなる。そう考えると、年齢を重ねることは満更でもないんじゃないかと思えてきます。

そして映画では死に焦点を当てることで、死と隣り合わせにある生もまた、よく表現されていると感じました。改めて「生きる」という事の意味を考えさせられました。


人の死、特に直接遺体に触れる職業ということで、世間から忌み嫌われるシーンがあるんだけど、亡くなった人を愛していた家族や友人知人にとっては、最期のお別れであるとても大事な儀式。もっくん演じる大悟が行う納棺の儀式の所作は、とても丁寧で美しく、死者に対する尊厳に満ちていてすばらしかった。

大悟は元チェロ奏者という設定なので、山形、庄内地方の美しい景色とチェロの音色が相まって、それがまた心を揺さぶります。久石譲さんの曲がこれまたすばらしくて。


ぜひたくさんの人に観ていただきたい映画でした。