それでも、生きてゆく ♯10

回を追うごとにどんどん辛くなっていくせいか、自分の中で予防線を張っているらしく、今回はちょっと距離を置いた感じで見てました。なのにオープニングの曲が流れただけで、その歌詞を聴いただけで、うるうるきてしまうのですねぇ。あと辻井さんのピアノにも。


前回、「死んだ人より生きている自分の方がかわいそうだ」という文哉のセリフを聞いた時、正直「じゃあ自分が死ねばいい」と思ったんだけど、今回本当に自殺を図った文哉。
最初は「自分の手で文哉を…」と思い洋貴が用意したナイフ。それが同じ思いを持った双葉の手に渡り、結局は文哉を助けることに使われたなんて。
とても意味があってすごく深いなぁ。


でもその直後、何もなかったように食堂に現れた3人にはちょっと驚いたけど(笑)、あんなにも一生懸命語った洋貴の言葉も、文哉にはまったく届かなかった。あんな場面で「お腹すいた」って言われちゃ、落胆や怒りなんかの感情を通り越して、もう笑うしかないよね。でもそういう絶望的なシーンなのに、お店の人にサラダの間違いを指摘する洋貴にすごくリアリティを感じたり。ああ、人間てそういうものかもなぁって。

もはや文哉は理解しがたい世界の住人で、こちらに帰ってくることができるのだろうか…というより、人間性がこれから育って行こうとする幼児期に今の狂気の原因があるならば、帰るも何も、もの心ついてからずっと違う世界に住んでいたのかもしれない。周りがそれに気づかなかっただけで。

隆美の響子に対する憎しみは私にはあまりピンとこなかったのだけど、同じ苦しむなら加害者側よりも被害者側になりたかったと思う気持ちならば理解できる気がする。でも実際に理不尽な理由で子どもの命を奪われた親の憤りや悲しみなど、経験した人でなければ決してわからないと思うけれど。


こんな救われない状況の中でも、もしかしたら真岐の意識だけは戻るのでは?なんて思っていたけど、やっぱり坂元さんは容赦しないみたい。意識が戻るどころか延命治療を終了する決心をした草間さん。文哉を雇ったのが他の誰でもない自分自身なだけに、計り知れないほどの後悔をしているんだろうなぁ。俊輔に至っては辛すぎて何も言えないよ。



先週、日曜の朝のトーク番組を最後にちょっとだけ見たんだけど、倉科カナちゃんが「今の役をどう演じていいのかわからない。初めて壁にぶつかった」みたいなことを言っていた。たぶんこのドラマの五月のことだと思うんだけど、妙に納得。周りの激しい役とは少し違うだけに、違う意味で難しそうだものね。


初回から重くて苦しい内容にもかかわらず、ぶれることなく毎回引き込まれたドラマだけに、最終回も大いに期待しながら見届けたいと思います。