月曜日に図書館で借りた短編集を読んでいたら、なぜか中学生の頃好きだった男の子のことを思い出した。


今振り返ってみても、中学生の頃の自分が一番嫌い。すべてに自信がなくて卑屈で、暗かった気がする。まぁ、O型気質の暗さなんて、たかが知れているとは思うけど。それから何年か経った頃、当時の友人と昔好きだった人に電話をしてみようということになった。


昔から、好きだからといって自分から告白など絶対にしない。だってもし断られたらどうする?*1その後気まずい雰囲気になって、友達ですらいられなくなる。そんなことになるくらいなら、一生片思いだって構わない。
ずっとそんな風に思っていた。

なのにその時はなぜそんな事になったのか覚えていないけれど、まぁ告白するわけでなし、自分の中ではすっかり過去のことになっていて、少々ノスタルジックな気持ちになっていたのかも。
その頃は当然携帯などあるわけもなく、卒業アルバムから電話番号を調べ、公衆電話(懐かしい響き)からドキドキしながら電話した。

私の通っていた中学校は、当時1学年が11クラスもあり、たった3年間の中学校生活では、顔すら知らない同級生もいた。そんな中、お目当ての男子は1年生の時に同じクラスだったものの、平凡で目立たなかった私のことなど、果たして覚えていてくれるんだろうか?と心配だったけど、意外にあっさり思い出してくれた。そして多分私が会ってみたいと言ったんだと思うが、久しぶりに街中で会うことになった。


数年ぶりに会った彼は相変わらず背が高く、はにかんだような笑顔も変わっていなかった。彼の「このあと約束があるから、それまででもいい?」という前置きにちょっとガッカリしながらも、お茶も飲めるケーキ屋さんで中学生時代の話をしたり、彼の通っている学校の近くにチーズケーキのおいしい店があると教えてくれたり。そんな話をした気がする。



中学生の頃、この人はとても女子生徒に人気があった。多分学年1モテたと思う。勉強もできたし運動部でもあり、3年の頃は生徒会長もやっていたと記憶する。同じクラスだった1年生の頃、席が隣同士になったことがあったんだけど、ひょんなことから共通の趣味の話で盛り上がった。そして「それの雑誌が出てるのを知ってる?」と聞かれ、「読んでみたい」と言ったら、貸してやるよと言ってくれた。

さっそく次の日紙袋に入れた3、4冊くらいの雑誌を、「学校では絶対見るなよ。あと誰にも貸したりしちゃダメだから」と言って貸してくれたんだけど、その雑誌そのものよりも、私にだけ貸してくれたということの方が嬉しかったのを覚えてる。

その後、彼の気を惹きたい派手な女子生徒たちが、彼の家にまでその雑誌を借りに行ったらしく、翌日学校で「家にまで来んな!自分で買えよ」と彼女たちに怒っていたのを見て、何だか自分は特別のような気がして、更に嬉しかった。

そんなことを久しぶりに再会した時思い出していたっけ。


楽しい時間はあっという間に過ぎ、別れる時これからも電話をしてもいい?と聞いたら、いいよという返事。その後何度か電話をしたと思うけど、私は「好きだ」とも「つき合ってほしい」とも言わなかったし、向こうもただ電話につき合ってくれるだけで何の進展もなく、だんだん共通する話題もなくなって、そのうち電話もしなくなった。大体私が好きだったのは中学校時代のことだったし、その時はその頃叶わなかった幻影にただ酔っていただけ。あちらにしても再会したのをきっかけにまた会いたくなるほど、私に興味はなかったんだろう。もしかしたら好きな人がいたのかもしれない。それでも私は心のどこかで誘ってくれるのを待っていたんだと思う。だけど拒絶されない代わりに誘われもしなかった。あれは何だったんだろう。彼の優しさだったんだろうか。でも考えてみれば、ただたまに電話をかけてくるだけの元同級生じゃ、冷たくできなかっただけかもしれないな。


今思うと本当に子どもだった。もしもう少し年を重ねていたら、お互いもっと上手く立ち回っていただろうなぁ。でもだからこそこれで良かったんだと思う。



そんな懐かしくちょっとだけ切ない思い出。

*1:自信のなさの表れ